過去と未来、人と想いを結ぶ設計思想
架け橋を「つなぐ」ではなく「橋を築く」営みとして捉え、交差点・需要創造・第三の存在論まで、実践の羅針盤となる考え方をまとめています。
1. 架け橋〜交差点〜(過去と未来、ヒトモノコト)
1-1. 過去と未来の交差点としての現在
私の思考の中核にあるのは、時間軸に対する独特な認識です。多くの人が「現在を生きる」ことを重視する中で、私は「過去と未来の交差点としての現在」に注目しています。これは単なる現在主義の否定ではなく、歴史の連続性を意識した上で、今この瞬間の選択が持つ意味を深く理解しようとする姿勢です。
1-2. 歴史の連続性と今この瞬間の選択
過去から受け継がれた智慧や価値観を現代に翻訳し、未来へと継承していく責任を感じています。この過程において、文化的アイデンティティを大切にしながらも、グローバルな視点で世界に開かれた姿勢を維持したいと考えています。
1-3. 文化的アイデンティティ:稲荷信仰の軸
私にとって稲荷信仰は自然な軸となっています。過去の民間信仰から現在の宗教的信仰への歴史的流れを、さらに未来へと継承していく役割を担いたいと考えています。稲荷・狐を象徴として、世界中の興味を持つ人が集まる場を創造し、伝統的な価値観を現代的な形で世界に発信していきたいと思っています。
1-4. クロスオーバープロデューサーという職能
時間を結ぶ
過去・現在・未来を往復し、歴史の連続性から次の一手を設計する。
領域を横断する
リアルとバーチャル、人・道具・場所。異質な要素に共通言語を与える。
見える/見えないを編む
記録に残らない想いや所作も丁寧に扱い、次の行動へ翻訳する。
1-5. 人・生き物・道具・場所の橋渡し
感謝は、神仏に向けるものに限りません。目の前の人へ、遠くの誰かへ、日々を支えてくれた動植物や、長く使ってきた道具へ、居場所を与えてくれた土地や建物へ——触れられる相手にも、触れられない大きなものにも「ありがとう」を伝える。その行為は、関係を閉じるためではなく、静かに次へと渡すための合図です。
1-6. リアルとバーチャルの融合
手触りのある現実と、記録と編集の利くデジタル。祖先から受け継いだ過去と、まだ形のない未来。人の温度と、仕組みの確かさ。これらが一つの場で呼吸するとき、形は一度ほどけて空になり、空からまた新しい形が立ち上がります。
1-7. 見えるもの/見えないものの往還
橋渡しは、舞台の中央で語ることだけを指しません。むしろ多くは、見えないところで糸を結び直す仕事です。誰と誰が出会えば良いか、どの記録がどこへ繋がれば役に立つか、どの手順なら疲れやすい人でも無理なく続けられるか。
1-8. 形即是空、空即是形の哲学
融合とは、要素の寄せ集めではありません。境界を澄ませ、何を残し何を手放すかを見極めてから、互いの良さが立ち上がるように往還させることだと考えます。「形即是空、空即是形」という往復運動を、体験と運用の両面でそっと支えます。
1-9. 時間軸に対する独特な認識
終わりを余白に、未来へ手渡す——それが私の役目です。橋を渡る瞬間にはいつも区切りがあり、そこには感謝がふさわしい。私はその区切りを整え、感謝を見える形にし、余白を置き、次の一歩が自然に生まれる流れを設計します。
2. 架け橋〜思いを未来へ〜
2-1. 「つなぐ人」から「架け橋を作る人」への再定義
最も重要な自己認識の変化は、自分の役割を「つなぐ人」から「架け橋を作る人」として再定義したことです。「つなぐ」という行為は、私が能動的にAとBを直接接続させる一回限りの作業です。これに対して「架け橋を作る」ということは、A地点とB地点の間に永続的なインフラストラクチャーを構築し、関係者たちが自らの意志で自由に行き来できる環境を提供することを意味します。
2-2. 架け橋の向こう側にある需要創造
さらに重要な発見は、架け橋そのものの価値を直接アピールするのではなく、架け橋の向こう側にある「その先の需要」を創造することでした。鉄道の例でいえば、鉄道に乗ることの価値ではなく、目的地での「人に会う」「温泉に入る」「仕事をする」「観光する」という根本的な体験への需要を創造することで、自然に鉄道(架け橋)の価値が生まれるということです。
2-3. 感情体験価値:ワクワク・一生の思い出
特に重要なのは、感情体験価値の創造です。「良かった」「知って良かった」「楽しかった」「わくわくした」「一生の思い出になった」という感情的な充実感こそが、人々が本当に求める根本的な需要だと理解しています。この感情体験を創造することで、自然に架け橋を渡りたい気持ちが生まれ、持続的な価値循環が実現されます。
2-4. 第三の存在論:作り手・受け手・つなぎ手
文化の生態系には、作り手・受け手に加えて第三の存在「つなぎ手」がいる。想いを翻訳し、価値を増幅させる想いの建築家である。
2-5. 有限性の尊さと永遠化の役割
万博や祭りのように「一度きり」だからこそ価値があるという有限性の尊さを大切にしています。その寂しさを認めつつ、それを未来を紡ぐエネルギーに変える役割を担いたいと思っています。運営者としては、顧客にとって「たった一回」「最後かもしれない」体験だからこそ、一生の思い出になるよう全力を尽くします。
2-6. 終わりを余白に、未来へ手渡す
神仏に、目の前の人に、生き物に、道具や場所に——「接続の終わり」に感謝を伝えること。その一回一回が、関係を消すのではなく継ぐことになり、いつかめぐって自分にも戻ってきます。誇りは声高な旗ではなく、そうやって橋を渡し続ける日々の手つきから育つ。
2-7. Archive・Form・Designの三機能
私の存在意義は、Archive(保存)・Form(現在化)・Design(未来設計)の3つの機能を果たすことです。過去を正確に保存し、現在に手触りのある形で提示し、理想の未来像を提示する。これらの活動を通じて、文化・教育・観光・都市・産業・福祉・エンタメを横断しつつ、常に信頼と節度を最優先に活動していきます。
2-8. 心のインフラストラクチャーを創る使命
私たちは生存必需品を作らない。その代わりに、人が日々を肯定し、未来へ向かうための条件を設計する。それは装飾ではない。経済、文化、福祉、教育を横断して機能する、見えない社会基盤だ。個人の喜びと共同体の誇りを一つの流れに結び、生活の実感を取り戻す営み——それが、私たちの仕事の本質である。
2-9. 価値の増幅装置としての役割
優れたつなぎ手は「価値の増幅装置」である。1を10にするのではない。1に別の1を掛け合わせて、3にも4にもする触媒のような存在だ。空間的価値、時間的価値、意味的価値という三次元で価値を創造し、埋もれた価値を発掘し、まだ名前のない欲求を形にする。
3. 架け橋〜創造を現実に〜(創構制運)
3-1. 創造:新しいアイデアを生み出す
創造——新しいアイデアを見つけ出す。異なる分野・文化・時代・技術を掛け合わせ、誰も見たことのない新しい形を作る。かけ離れたものほど面白くなる。共通点のないように見える領域を結びつけることで、強いインパクトと独自性を生む。
3-2. 構想:想いを戦略に落とし込む
構想——想いを戦略として設計する。知ることから始める。体験し、戦略を編む。徹底した理解からその対象物・市場・背景を徹底的に調べ、構造を把握する。まず自分が客・利用者として体験し、感覚的にも理論的にも理解する。収集した知識や経験を、目的達成のための戦略に変換する。
3-3. 制作:プロの技術で形にする
制作——プロの技術で具現化する。「得意な人が得意なことを」。企画は企画のプロが、実装は実装のプロが、それぞれの強みを生かして担う。専門家ネットワークを大切にし、各分野の有識者や実務家との横のつながりを育て、プロジェクトごとに最適な布陣を組む。
3-4. 運用・発信:継続的に世界へ届ける
運用——継続的に世界へ届け続ける。一度きりで終わらない仕組みを設計。記録と運用を整え、価値が循環する状態をつくる。再訪性のある価値、もう一度足を運びたくなる構造をつくることだ。知見を蓄積し、共有し、成功だけでなく失敗も文書化し、次に活かす。
3-5. 小さな真珠方式:小実験→測定→公開→標準化
等身大のメッセージと活動から始めて、一つ一つの成功体験を積み重ねながら、徐々にスケールを拡大していきます。「小さな真珠」方式で、小実験→測定→公開→標準化のサイクルを回し、再現可能な価値創造モデルを構築します。
3-6. 二層で束ねるアプローチ
この設計が生きるためには、感情だけでも情報だけでも足りません。私は必ず二層で束ねます。現物とデータ、物語と手順、個人と共同体。たとえば祭りの灯は、小さな記念品として手元に残り、同時に語りや写真、音の記録として誰でも辿れる形で保存される。
3-7. 六つの節度:惟神・依代・中今・円融無碍・直会・常若
現場では、六つの節度を胸に置きます。惟神(かんながら)で目的と境界を澄ませ、依代(よりしろ)として媒介を据え、中今(なかいま)で過去と未来が交わる一点を開き、円融無碍(えんにゅうむげ)で滞りなく結び合い、直会(なおらい)で日常へ戻し、常若(とこわか)で循環へ戻します。
3-8. chigix.comを拠点とした理念発信
まずは自分の拠点であるchigix.comで、これらの理念とビジョンを明確に言語化し、体系的に発信します。総合的な理念と個別プロジェクトを整理し、訪れる人が私の目指す方向性を理解し、共感できる場を作ります。
3-9. 各分野での架け橋創造の実践
文化・観光領域では稲荷信仰を軸とした深い精神体験の提供により、現代人が求める心の平安への需要を満たします。人材育成・教育領域では個人の隠れた才能発掘と開花支援システムにより、自分らしさの発見への需要を創出します。国際交流領域では文化理解を前提とした真の相互理解プログラムにより、深いつながりへの需要を満たします。経済・ビジネス領域では「買ってもらう」価値創造システムの構築により、本物の価値への対価、持続可能な関係性への需要を創出します。